お 隣 さ ん
     
                                                   
 
高台に住むようになって、三十数年が経ちます。引越したのは三月で、向日市の競輪場近くからだったのですが、高台の寒さにびっくりしました。庭のある家で野菜を作りたい、という夫のかねてからの夢を実現すべく、引越し早々庭を掘り返し始めたのですが、土がカチカチで刃が立たないのです。「ここは永久凍土か!」と、夫が言ったのを思い出します。
わが家は、高台の中でも一番北の山際なので、日当たりも悪いということもあったと思います。でも夏近くになると、裏の用水路にホタルが飛び交い、やぶ蚊に悩ませられながらも、優雅な風情を楽しみました。
今は温暖化が進んだのか、凍土になることはなくなりましたが、ホタルも見かけなくなりました。最近、積もりに積もった用水路の土砂を取り除く作業があり、ひそかに期待したのですが、チロチロ流れる谷川の水音は復活したものの、ホタルはまだお目にかかっていません。高台に来た当初パートに通っていましたが、暑い日坂道を汗だくになって帰り着き急いでシャワーをかぶっても体から熱気が取れず、熱中症みたいになりました。そんなことからバイクに乗るようになり、今やベテランライダーの域に……と思いきや、周囲から危ないしいい加減やめたらといわれる歳になってしまいました。

阪急新駅ができたらやめようと思っています。ここが終の棲家になるかどうか分かりませんが、今は「ここがふるさと」といえる毎日です。
 

4丁目           菅原充子 さん