お 隣 さ ん
     
                                                   
  大阪の街中で育った私は27年前にこの地に越してきました。山を目の当たりにして近くで暮らすようになって一番驚いたこと、それは雨がひとしきり降った後に山から立ち昇る水蒸気でした。西山からさかんに立ち上る真っ白なその様を初めて目にした時、とても神聖な光景に感じられました。

鶯の鳴き声で目覚めた春、蛙の合唱を子守唄に眠りについた夏、紅や黄の葉に囲まれた秋、田畑一面におりた真っ白な霜を見ながら駅へと急いだ冬の朝……。自然が見せてくれる変化に、子どものように喜び、驚いて日が過ぎました。

今は独立した子どもたちも、五小からの帰り道で自然の道草をたっぷり楽しんだようです。まだ多くの田があったので、並んだ二枚の田んぼの一方にはカブトエビが、一方にはオタマジャクシが住み分けているのを発見したと嬉しそうに知らせてくれた顔を懐かしく思い出されます。

犬たちと小泉川の土手をよく散歩しました。空の色を映して流れる川に、土手の植物に、羽を休めに来る鳥たちに季節の移ろいを感じました。写真でしか見たことのない「カワセミ」に出会った時は、驚きで息をのむ思いでした。そんなこんなで、自然と縁遠かった私も、気がつくと人生の半分近くを自然に囲まれて暮らしたことになります。

先日遊びにきた5歳の孫が雨の外を眺めていましたが、突然大きな声を上げました。「わあ、お山から湯気がいっぱい出てる~!」
 

2丁目           米岡 芳枝 さん